分かりやすい泌尿器科の話 B
尿漏れ・尿失禁
森医院 院長 森 啓高
ある医師会での話です。尿漏れ・尿失禁の相談を患者さんから受けた医師は出席者の8割にものぼることがわかりました。また、インターネットで尿失禁を検索してみますと、10000件以上見つかります。いかに多くの方が悩んでおられるかということがお分かりいただけると思います。成人女性の30%、成人男性の5%に尿失禁が見られるといわれています。命にかかわることはまずありませんが、自尊心と生活の質を脅かし、日常生活上重要な問題です。最近はさまざまな治療法があり、多くの患者さんで改善が期待できます。
1. 尿失禁とは?
1) 尿が自分の意思に反して漏れる
2) 客観的に確認できる
3) 社会的、衛生的に問題になる
つまり、尿が出ては困る場合に出てしまうことです。
2. 排尿の仕組み
女性は男性に比べ尿失禁が起こりやすくなっています
女性:尿道が短く直線的、出産で括約筋が緩みやすい
男性:尿道が長く曲がっている
3. 失禁には型がある
(ア) 腹圧性(ふくあつせい)尿失禁
最も多いタイプです(尿失禁の7割)。
咳、くしゃみ、重いものを持つ、スポーツなど、おなかに力を入れたときにもれるタイプです。骨盤底筋が緩むことで起こります。
(イ) 切迫性(せっぱくせい)尿失禁
強い尿意とともに、我慢できずにもれるタイプです。原因となるもとの病気を調べる必要があります(膀胱炎、膀胱結石、膀胱腫瘍、神経疾患など)。
(ウ) 混合型
1)+2)
(エ) 溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
尿が膀胱から出なくなり(尿閉)、あふれてもれるタイプです。元の病気を調べる必要があります(前立腺肥大症、神経疾患など)。
4. 治療法は?
(ア) 腹圧性尿失禁
骨盤底筋体操(肛門を閉める体操で、2ヶ月は続けます)や内服薬(塩酸クレンブテロールなど)でまず治療します。失禁がひどい場合は手術療法も有用です。最近は体に負担の少ない手術が主流です(コラーゲン注入手術、スリング手術など)。
干渉低周波治療器も有用です。
(イ) 切迫性尿失禁
元の病気が無いかを確かめます。膀胱の病気や神経の病気があればそちらの治療をします。漏れを抑えるためには内服薬(塩酸プロピベリン、塩酸オキシブチニンなど)を内服します。
干渉低周波治療器も有用です。
(ウ) 溢流性尿失禁
尿閉きたすもとの病気を治療します。前立腺肥大症なら内視鏡手術が代表的です。神経疾患なら投薬とリハビリを行います。手術ができない場合や、薬に反応しなければ自己導尿(細い管を自分で尿道から挿入して排尿する)も指導します。
【ご参考までに】
保険同人社から尿失禁の本が出版されています
「体験者が語る失禁コントロールガイド」
日本コンチネンス協会編著
定価1350円